診療内容
婦人科のがん
婦人科のがん
長年、婦人科悪性腫瘍の診療・研究に従事していた経験を活かし、
専門性の高い診療をご提供いたします。
子宮頸部異形成(子宮頸がんの前段階)
子宮頸部異形成とは
子宮頸がんは、HPV、ヒト・パピローマウイルスの持続感染が発生原因として明らかにされました。性交渉を介して生じる表皮の小さなキズから、HPVは生殖器粘膜の基底細胞に侵入し、潜伏状態となります。HPVの感染は極めて一般的な現象で、多くは免疫系により検出感度以下に排除されていきます。しかし、一部感染が持続し、異形成というがんになる前の病変(前がん病変)を経て、がん化していくと考えられております。
異形成は、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN:cervical intraepithelial neoplasia)ともいわれ、軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成(CIN3)と進展していきます。
子宮頸部異形成は自覚症状がないことが多く、子宮頸がん検診(細胞診)で分かることが多いです。
子宮頸部異形成の経過・治療
●軽度異形成(CIN1)・中等度異形成(CIN2)の場合
軽度異形成(CIN1)や中等度異形成(CIN2)と診断された方は、定期的なフォローアップが必要となります。このHPVによる子宮頸部上皮内病変の進展は一方向性ではなく、CINグレード間で、進展や退縮の両方向性が考えられております。
HPV感染と子宮頸がんへの進行
ハイリスクHPV型の持続感染が子宮頸がん発症のリスクになる
* 細胞異型がなくても、コイロサイトーシスが認められればCIN1とする
** 従来は高度異形成と上皮内がんは別の概念とされていたが、管理・治療が同様であるため、CIN分類ではCIN3としてまとめられている
CIN:cervical intraepithelial neoplasia
Markowitz LE et al. MMWR Recomm Rep. 2007; 56(RR-2): 1-24. より作図
子宮頸癌取扱い規約 病理編 第4版 日本産婦人科学会・日本病理学会編、2017
このように、子宮頸がんの発症には、長期にわたる上皮内病変の進展・退縮を経て、感染から約10年以上の期間が必要と考えられております。
●ヒトパピローマウイルス 16,18,31,33,35,45,52,58型が陽性の方で、子宮頸部中など度異形成(CIN2)が1年以上継続する場合
このような方は5年以内に約20%の方が子宮頸部高度異形成(CIN3)に進行するといわれていますので、定期検診が必要になります。経過を診て、治療(子宮頸部円錐切除術など)をおすすめする場合があります。
●高度異形成(CIN3)の場合
約15-20%が早期のがんへ移行するといわれていますので、子宮頸部高度異形成の診断がついた場合は治療(子宮頸部円錐切除術など)をおすすめしています。手術が必要な場合は、信頼できる医療機関をご紹介いたします。
子宮頸がん
子宮頸がんとは
子宮頸がんは、子宮の入り口(子宮頸部)に発生する がんです。子宮頸がんは大きく分けて、扁平上皮細胞に発生する「扁平上皮がん」と円柱上皮細胞に発生する「腺がん」があります。以前は、扁平上皮がんが圧倒的に多かったですが、近年は腺がんが増加してきています。腺がんは、扁平上皮がんと比較して、治療が難しいという特徴があります。進行すると治療が難しいことから、早期発見は非常に重要です。
●無症状でも子宮頸がん(子宮がん検診ではなくて)検診を受けましょう
子宮頸がんは「異形成」といわれる、がんになる前の状態を経てからがんになります。異形成の時期は無症状であるため、定期的に子宮がん検診を受けることが大切です。
なお、喫煙は子宮頸がんの発生を高める要因と考えられており、子宮頸がん予防の観点からも禁煙が進められます。
子宮頸がんと「ヒトパピローマウイルス(HPV)」の関連性
子宮頸がんの発生には、ヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)の感染が関連しています。
HPVは性交渉で感染することが知られています。しかし、多くの場合、感染しても免疫によって排除されます。HPVが排除されず感染が続くと、一部に子宮頸がんの前がん病変(子宮頸部異形成)や子宮頸がんが発生すると考えられています。
子宮体がん
子宮体がんは、子宮体部に発生するがんです。
子宮体がんは、子宮体部の子宮内膜と呼ばれる細胞から発生するため、「子宮内膜がん」ともよばれています。同じ子宮に発生するがんですが、子宮体がんと子宮頸がんでは、原因や種類、性質などは異なり、治療法も異なります。また、子宮内膜異型増殖症という病気があります。この病気の一部は子宮体がんに進展していきます。
子宮体がんの好発年齢は50〜60歳で、子宮頸がんに比べ高年齢の傾向にあります。
●「不正出血」は子宮体がんのサインかもしれません
子宮体がんの代表的な症状は、不正出血です。不正出血と言っても、おりものに血が混ざり、褐色に見える位のものもあります。月経ではない期間や閉経後に不正出血がある場合は婦人科を受診しましょう。
その他の症状として、
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排尿時の痛みや排尿のしにくさ
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性交時の痛み
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下腹部の痛み
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おなかが張る感じ(腹部膨満感) など
が現れることがあります。
卵巣がん
卵巣には多種多様な種類の腫瘍が発生し、卵巣腫瘍は、良性腫瘍と悪性腫瘍に加え、境界悪性腫瘍があります。表層上皮性の悪性の腫瘍を卵巣がんとよびます。組織型としては、主に「漿液性腺がん」「粘液性腺がん」「類内膜線がん」「明細胞腺がん」に分けられます。卵巣がんは、近年増加傾向にあります。
●卵巣がんは症状を自覚しにくい
卵巣がんは、症状に乏しいため、「サイレントキラー」と称されております。
進行すると、
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おなかが張る感じ(腹部膨満感)
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下腹部にしこりを感じる
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腹痛
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腰痛
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便秘、頻尿 など
が現れて、受診に至るケースが多いです。
自覚症状がある時には、がんが進行していることも少なくありません。残念ながら、卵巣がんを早期発見する有効な方法はまだありません。腹部の違和感があった場合は、早めに婦人科を受診することが大切です。
術後のフォローアップ(経過観察)
当院では、術後のフォローアップを行っています。
定期的な診察をご希望の場合やご自宅の近くで継続して診療を受けたい場合など、お気軽にご相談ください。
[フォローアップの主な対象疾患]
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子宮内膜症(子宮腺筋症、チョコレート嚢種)
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子宮筋腫
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子宮頸部異形成
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子宮頸がん
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子宮内膜増殖症
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子宮体がん
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卵巣腫瘍(良性、中間群、悪性)
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絨毛性疾患
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外陰・腟腫瘍 など